ろうのスーパーヒーローが主人公の映画


ろうのスーパーヒーローが主人公の映画
2017年9月10日(日)
筆者:Lucia Bellaspiga

「サイン・ジーン」はエミリオ・インソレラ監督のアクション映画であり、出演者は全員、映画の中だけでなく日常生活でもろう者である。映画の中で、出演者は手話により超能力を操る。映画には字幕も用意されている。
すでに映画の試写会の評価を見れば、エミリオ氏はろう者に対する常識を覆すことに成功していると言えるだろう。「サイン・ジーン」のワールド・プレミア前夜祭は、ミラノデュオーモ横の歴史ある建物「オデオン(The Space Cinema Odeon)」にて行われ、ろうの俳優や観客が豪華なドレスやスーツに身を包み入場に長い列を作っていた。映画では世界で初めて聴覚障害者によるろうのスーパーヒーローが主人公となり、超能力や格闘、特殊効果を用いて悪のギャングと戦い、世界を救うという物語となっている。ウィリアム・ハートと、聴覚障害者の女優として脚光を浴びたマーリー・マトリン主演の映画「愛は静けさの中に」からすでに30年が経つ。映画「サイン・ジーン」もまた、ろうが主人公の映画であるが、違いはこの映画を見るにあたり字幕を必要とする人は聴覚者以外にほとんど居ない事だ。なぜなら、映画は視覚的なコミュニケーションに加え3ヶ国語の手話(イタリア語、日本語、アメリカ英語)で話されているからである。

実際に世界のろう者が「ジェスチャー」のように同じように理解しあえると勘違いされがちであるが、その他の言語と同じように手話は言語ごとに異なっている。こういった点で、他の手話言語を話す映画の視聴者にとっては字幕が必要となる。ミラノのオデオンで開かれたワールド・プレミアでは、監督であり主人公のエミリオ・インソレラがフラッシュを浴びながら、ノルウェー人女優兼モデルのキャロラ・インソレラとともに入場した際には、二人の入場をその場に訪れた観客は誰一人として音を出さず、ただ静かに手を空中でヒラヒラと蝶のようにして拍手を送っていた。

1979年ブエノス・アイレスでろうイタリア人である両親の元に生まれ、ワシントンにて言語学と映画学を、ローマ・ラ・サンピエンツァ大学ではマスコミュニケーションを学んだエミリオ・インソレラは妻であるキャロラ、また2歳の娘と同じように生まれつきろう者である。世界初イタリア手話マルチメディア辞書の共同作成者は今や視覚コミュニティーの活動家として名高い。ワールド・プレミアでは「私は日本でババヒロシさん(サイン・ジーン出演者)と出会ったその日に映画作成を本格的に考え始めました。共に映画の内容を構想していくにつれ、台本を書くことを決めました。」とエミリオ氏が手話で観客に語りかけると、隣にいる二人の翻訳者が日本語とアメリカ英語の手話で観客に訳し、聴覚者に翻訳される時を除いて、無音でのスピーチとその翻訳が続いた。

「2008年に撮影を開始してから、私たちはイタリア、日本、アメリカにて撮影を行っていたにも関わらず、合計25000ユーロ(日本円でおよそ337万円)にて映画を作成させました。映画作成への情熱だけが私たちの取り柄です。」とエミリオ氏が話す中、実の弟であり映画の出演者であるウンベルト・インソレラは「映画作成は想像以上に大変なものでしたが、障害があろうとも夢は叶えられる、ろうであっても何でも出来るということを証明出来たかと思います。今日お集まりいただいたろうの観客の皆様の中にも起業をしている人がたくさんいます。私の友達もろうでありながら、バーを開業しました。」と様々な思いを感情的に話していた。この映画は映画の枠を超えて、ろう者に対する誤解や偏見などに働きかけているという事は明らかであった。

「聞こえない人たち」と呼んで欲しくない、偽善と慰めは要らないという思いが、手話により超能力を操るろうのヒーローが日本の悪の組織と戦うという映画の内容に反映されています。映画の題名である、突然変異遺伝子「サイン・ジーン」は選ばれしものだけが保有し、そしてその遺伝子がヒーローを無敵にさせています。映画007のように、彼らもまた、突然遺伝子を持つろうから構成されるアメリカの国防総省と連携した諜報機関QIAに所属しています。物語の中で彼らは大阪へと派遣され、「サイン・ジーン」を滅ぼそうとする大阪のギャングとの戦いが待っていますが、手話による超能力で切り抜けてくれる事でしょう。


9月14日より各地のUCIシネマにより上映が開始される事について、国立ろう協会は「極めてユニークな実験である」と言及した。また協会は「監督から他の国際的なキャストまで全員がろう、またはろうの家族というのは極めて異例である。通常の映画では翻訳者が代わりに役を演じるが、例えば、イタリア人が日本人役を演じたら可笑しなように、手話話者からは悪い評判しかない。 」と述べた。映画「サイン・ジーン」の最大のポイントは視聴者の、ミステリアスで魅惑的なろうへの先入観の壁を破ることである。オデオンでの前夜祭で、声を出さなくてもお互いがコミュニケーションをし、積極的に話しあい一丸となっているのを見て、 筆者はインソレラ氏に本当に常識を覆された。映画はビデオゲームや日本の漫画のように、特殊効果や悪との戦いが若い世代から人気を集めることは間違いない。



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